『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』パロディ元ネタ考察(短編版)
電撃文庫の寄生虫パラサイド、『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』は現在カクヨムで特別短編を絶賛公開中なので、そちらも取り上げていこうと思う。
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『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』パロディ元ネタ考察 - 傷口にユーゲル
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負けるな。
●クソニート社会復帰風雲録 ~初恋篇~ と弟子(1)
「壁ドンに床ドン……」
「原理主義者だなアイツは……」
最近は違う意味での『壁ドン』が広まっているが、本来の意味はこちら。
唐突に顔を上げ、アーデルモーデルは裏声で叫ぶ。この人型ゲリョスを覗き込もうとしていたのか、その女性は思わず尻餅をついた。
『ゲリョス』は『モンスターハンター』シリーズに登場する鳥竜種のモンスター。死んだふりをしてハンターを欺く習性がある。
「何って、僕の名前を思い出して下さい」
「は? シコルスキ・ジーライフ……ですよね?」
「いえ……ロベルト・ペタジーニです」
「しつけえんだよお前そのネタ! どこまで本気かも分かんねえしよ!」
小説1巻を参照。
「マジでやめろって!! 何がそこまでお前を突き動かしてんだよ!!」
「情熱を秘めた肉体――ですかね」
「口喧嘩の強いマザコン(ジョナサン・グレーン)!?」
『ブレンパワード』に登場する、煽りのテクニックに定評のある人物から。主人公の伊佐未勇と舌戦を繰り広げたが、勇の姉、母親の両方と寝たということを抜群の演出力で暴露し、勇を泣かせてしまった。
「いやさぁ、ババアなんて馬鹿にしてたさ。がねぇ、いやぁ、味わい深かったって感動したぁ」
「ならお母ちゃんに聞いてみなよぉ。情熱を秘めた肉体…」
が、この行商人の皮を装ったゴリラは、肉体言語(ドラミング)による対話をノータイムで試みた。
『ドラミング』はゴリラが胸を叩く動作。これは攻撃の予備動作ではなく、自己主張、仲間とのコミュニケーション等の目的があるらしい。
『肉体言語』は『大魔法峠』の主人公、田中ぷにえが得意とするサブミッション技の数々。転じて言葉ではなく力のぶつかり合いで語り合うさまを指す。
「ッキャオラァ!!」
『グラップラー刃牙』シリーズに登場する空手家、加藤清澄の掛け声「キャオラァッッ」から。
「生存罪!? っつーか小生も普通の悩みぐらい持つわ!! 小生だってミミズだってオケラだってアメンボだってみんなみんな生きてんだぞ!!」
「その言い回しだとあなた虫と同格になりますよ」
童謡『手のひらを太陽に』から。
「このチンカス共がァーッ!! 笑うなっつったろうがァーッ!!」
『ジョジョの奇妙な冒険 第4部ダイヤモンドは砕けない』に登場するラスボス、吉良吉影のセリフ「このクソカスどもがァーーッ!!」から? よりヒドくなっている。
「い、いや、笑ってねえって……ぶふふっ、で、何だっけ? 赤ヘル軍団の話?」
「鯉じゃねえよ!!」
『赤ヘル』はプロ野球チームの広島カープ。広島では頭部に赤い斑点があり、赤ヘルをかぶっているように見える『赤ヘル鯉』が養殖されている。
●クソニート社会復帰風雲録 ~初恋篇~ と弟子(2)
(略)逆にアーデルモーデルは常時石ころ帽子状態だったので、女子と会話した経験がほぼ無い。その経験値の差が、今如実に現れようとしていた。
『石ころ帽子』は『ドラえもん』に登場するひみつ道具のひとつ。かぶると路傍の石のように目立たなくなり、他人からまったく気にされなくなる。
『DEATH NOTE』に登場するニアの部下から。デスノートを盗み出して一晩で複製し、本物とすり替えるという離れ業を演じた。
なお、デスノートに名前を書かれた場合、特に死因を指定しなければ心臓麻痺で死ぬ。
「っっパぁ!? あれなにここ!? 暗い!! 狭い!! 卑猥!!」
『うる星やつら』に登場する面堂終太郎が釣り鐘に閉じ込められた時のセリフ「暗いよ~狭いよ~怖いよ~」から?
「こっちのセリフだっつーの。脳味噌の代わりにメロンパン詰まってんのかお前?」
バラエティ番組『トリビアの泉』では、各回で最も多く『へぇ』を獲得したトリビアに『金の脳』、高橋克実が個人的に気に入ったトリビアに『銀の脳』が送られ、その中はメロンパン入れになっている。
(略)モンハンだとエリア移動したくなるやつレベルで、攻撃モーションを見せている。ブルファンゴがしたたかに吹っ飛びそうなやつがもうすぐ来るだろう。
『ブルファンゴ』は、『モンスターハンター』シリーズに登場するイノシシ型のモンスター。
「こっちは昔ながらのミルクパン、すぐに売り切れちゃうクリームパン……最後はなんと! みんな大好きフランスパーン!」
プレイステーション2用ソフト『みんな大好き塊魂』から? よくある言い回しなのであまり意味はないかも。
「女神の名は《ミナト》さんッ! あのパン屋の一人娘にして看板娘! 趣味は読書にカフェ巡り!(略)」
●看病と弟子(1)
(略)一方でサヨナは勝手に盛り上がっており、さながらヒロインのような面構えである。こいつはメチャ許せんな……。
『ジョジョの奇妙な冒険 第3部スターダストクルセイダース』に登場するラバーソールが花京院典明に変装していた際、財布を盗んだ男に対してバックブリーカーを決めた際のセリフ「こいつはメチャゆるさんよなああああ」から。(こうして書くと意味不明のシチュエーションである)
「足掻いてるジオングみたいで……素敵ですよ……」
『機動戦士ガンダム』に登場するモビルスーツ『ジオング』から。コクピットが頭部にあり、アムロの乗ったガンダムにボコられた際、頭だけの状態で奮戦した。
「やれ」
生首ユージンが指示を出すと、下半身ユージンが再びシコルスキの顔面を蹴り飛ばす。
やっていることはVガンダムだった。
『機動戦士Vガンダム』に登場するモビルスーツ『ヴィクトリーガンダム』から。
脚部ボトムパーツを射出し、敵にぶつけることで攻撃とする掟破りの戦法を使用する。
「僕の転送魔法が中途半端に発動し……君のパーツがバラバラに転送されたようです……。いわゆる《ノヴとメレオロンが組んで王に窓を開く者(スクリーム)すれば終了理論》ですね……」
「永遠に実践されない理論打ち立てんのやめろ」
『HUNTER✕HUNTER』において、キメラアント編のボス、メルエムに対してしばしば議論を呼ぶ話題。ノヴの念能力『窓を開く者(スクリーム)』は、両手の間に帯状にオーラを展開し、そこに入った物質を消滅させる(おそらく自身の念空間へ転移させる)というもの。また、メレオロンの念能力『神の共犯者』は、自身と自身に触れている者を他者から認識できなくするというもの。
この2人がコンボすれば、メルエムをあっさり暗殺できる……というのが件の理論だが、クラピカの師匠イズナビの言葉を考えると、『何でも切れる刀』は作れないように、『相手の防御力を完全に無視する』攻撃も難しいと思える。たぶん王に使っても「閉じろ!!」できないんじゃないだろうか。
「俺に……何した……?」
「今回ハンターハンターパロ多いですねえ……」
『HUNTER✕HUNTER』グリードアイランド編において、ゲームに入ったばかりのキルアがスペルカードで攻撃された時のセリフ。これ言われなきゃハンターネタとわからないのでは。
「すいません、本当に僕、体調悪くて……少しでも体力が戻れば、すぐ戻しますから……命だけはどうかお助けを……足マンくん……」
「誰が足マンだコラ」
『世紀末リーダー伝たけし!』に登場する宇宙人から。M字開脚をしたムキムキの脚の間に頭部があり、頭に毛が3本生えているという強烈なルックスをしている。
世紀末と言いつつ21世紀になっても漫画の連載が続いていて、作中でしまぶーがツッコまれていた。しかし世紀末からもう20年……? マジ?
「……殺意なき悪意は嫌がらせですが……悪意なき殺意はプロの仕事です……」
「殺し屋やってんのかアイツ!?」
パスカルの言葉「力なき正義は無能であり、正義なき力は圧政である」から。
毛糸の帽子を更に深く作ったそれは、顔をすっぽり覆うぐらいの大きさである。そして、顔を覆った際に、目と鼻と口だけが露出するようになっている。
「異界では……悪事に手を染める際、それを被るらしいです……」
目出し帽。銀行強盗とかがかぶってるアレ。
●看病と弟子(2)
「ふふっふっふふっふー、てん」
(アイツ……マリオのBGMを鼻歌しながら作業してやがる……)
地上ステージのBGM。1-1ですぐ聞ける。
「アレなんだって……その…………アッシマーだ」
「NRX‐044!?」
「何で型番知ってんだよお前」
『機動戦士Zガンダム』等に登場する可変モビルスーツから。『足マン』から『アッシマー』へのジャンプは素直に感心する。
足マンのフォルム的にはむしろビグ・ザムとかウォドムに近い。
「ああ。俺のCVは中村悠一だからな。そりゃ似てる声の奴もたまには居るだろう」
「たまにじゃなくてめったにいないですよあのイケボは……」
シグマ・セブン所属の男性声優から。ガンダムシリーズでは『機動戦士ガンダム00』のグラハム・エーカー、『機動戦士ガンダムUC』のナイジェル・ギャレットに声を当てている。
個人的にはユージンは細谷佳正、シコルスキは江口拓也、サヨナは藤田茜、アーデルモーデルは村瀬歩でお願いします。
「ねじれたパンみたい……」
たまに給食に出てたやつ。
「まずは……ツタの葉」
「お、おう。食えんのかそれ……?」
「次にクモの巣」
「いやもう食えねえわこれ……」
「そしてこれらから出来上がったネットに」
「…………」
「最後はとっておきのトラップツールです」
「落とし穴の調合してんじゃねえよクソ野郎!! 正気か!?」
『モンスターハンター』シリーズのアイテムから。『ツタの葉』と『クモの巣』を調合することで『ネット』が入手でき、さらにそれに『トラップツール』を調合することで『落とし穴』ができる。
「失礼な! 正気ですっ! 料理はユーモアだ、って昔聞いたことがあるんですよ! ほら、こっちには一生懸命用意したゲネポスの麻痺牙が!」
「ババコンガの捕獲予定でもあんのかテメェは!?」
どちらも『モンスターハンター』シリーズから。『ゲネポスの麻痺牙』は大型モンスターにも有効な毒を持つ素材。『ババコンガ』はピンク色の巨大なゴリラ。
「お前を殺す」
「ピースクラフト気分……!!」
『新機動戦記ガンダムW』第1話において、主人公のヒイロ・ユイが誕生日パーティの招待状を渡してきたリリーナ・ドーリアン(本名リリーナ・ピースクラフト)に対して放った言葉から。ただしこのセリフを言われて死んだ者はいない。
「なにって、見たら分かるじゃないですか。討伐隊正式銃槍です」
「つまりガンランスじゃねえか!! 何でンなもん担いで来てんだって言ってんだよ!!」
「え……? 操虫棍の方が向いてます……?」
『モンスターハンター』シリーズの武器から。『ガンランス』はランスと大砲を合わせたような見た目がかっこいい武器。『操虫棍』は猟虫を飛ばして遠距離攻撃が可能な武器。
「武器種の話じゃねえよ!! 今からドドブランゴでもシバきに行くのかお前は!?」
「ドドブランゴって……そんなわたしの知り合いのユージンさんじゃあるまいし」
白い体毛と鋭い牙を持ったマンドリルのような顔をしたモンスター。
「普通の包丁でいいんだよテメェみてえなゆうたは!!」
「そんな野良部屋に現れたやべーやつみたいなアダ名はやめてください! もう……料理はパフォーマンスだ、って言葉を知らないのかな……この足……」
特に『モンスターハンター4・4G』で多く出現した迷惑プレイヤーの名前から。なぜか『ゆうた』という名前が多かったため、キッズ・地雷プレイヤーの代名詞として広まった。
「がとちゅ!!」
「何してんだ!! 殺すぞ!!」
『るろうに剣心』に登場する斎藤一の必殺技『牙突』から。また、北米版吹き替えによる空耳『ガトチュエロスタイル!』から。
「テメェが奇行に走るからだろうが! キャベツが魚沼宇水にでも見えてんのか!?」
「ハハハハハハハ!」
「何が可笑しいんですか!!」
「テメェの存在そのものだよ!! 全てを否定してえわ!!」
『るろうに剣心』から。魚沼宇水のセリフ「……フ」「フフフハハハ」「ハーッハハハハハハハハ」
「何が可笑しい!!」
および斎藤一のセリフ「お前の全てを否定してやる」から。
キャベツから包丁を引き抜いたサヨナは、ぶつぶつ言いながらも、断頭台を思わせる動作でキャベツを半分に切った。それすらも覚束ない手付きであり、思わずユージンは「指(エンコ)詰めんの?」とツッコミを入れてしまう。
ヤクザ用語。『エンコ』は『猿猴』に由来し、『手長猿』や人形浄瑠璃においての『手』を表す。
「殺す、でしょう? 出来もしないくせに……w」
単芝を生やすな。
「痛い……ハートマン軍曹みたい……」
「古いんだよネタが!」
キューブリック映画『フルメタル・ジャケット』から。ハートマン軍曹の出番は前半だけだが、存在感と暴言のバリエーションがすごい。
(略)今、賢勇者は糞を食っている。もう口の中糞まみれや。
岡山の建設作業員が掲示板に書き込んだ、『やったぜ。』という一文から始まる妙に文才を感じさせるプレイ内容から。詳しくは割愛。
●雑誌用短編と弟子
「先生の予想では、ライトノベルのメイン読者層が選挙権を得るであろう二年から三年後だそうです」
ということは、KADOKAWAが想定するラノベのメイン読者層は15~16歳程度ということらしい。
しかし本作品の読者層は……この話はやめておこう。
「面白ければなんでもあり(意味深)」
元電撃文庫編集部編集長、三木一馬の著作『面白ければなんでもあり』から。また、著作内で説明される、電撃文庫のコンセプトから。
――何だかんだでカグヤとの間を取り持っていたシコルスキが不在になったことにより、無言の空間が広がっている。友達の友達はマジ他人、という状況と言えるであろう。
『笑っていいとも!』のトークコーナー『テレフォンショッキング』において、ゲストが決まって言うフレーズ「友達の友達はみな友達だ」から。
――ゴリラは人間じゃないからね、仕方ないね。
『本格的 ガチムチパンツレスリング』における空耳「仕方ないね」から。
「いやこれイラスト付きのクッキーっていうか、もういらすとやそのものじゃねえか!!」
無料イラストを提供するウェブサイトから。私のお気に入りは『クトゥグア』のイラストと『きれいな泥団子』のイラスト。
「だって草って言ったんですよ!? ファンタジー小説なのに! そんな煽り方するとか最低です!!」
「その程度で煽られたと感じたなら、もう二度とお前ポケモン出来ねえぜ?」
人によっては、一部の草ポケモンはルックスだけで煽られたように感じることがある(個人の感想)。マスキッパ、ナッシー(アローラ)、ヤナップ、ルンパッパなど。
また、害悪プレイをしてくるのは草タイプが多い。
「じゃあお前変異種じゃねえか」
「師としては弟子を変異種よりも希少種と言ってあげて欲しいところです」
「わたしはサヨナ原種だっつーの!! この草魔王を弄り倒すかと思いきや、何でわたしに矛先向けてくるんですかあなた方は!!」
『モンスターハンター』シリーズでのモンスターの特殊個体。
「実は勇者か風来坊じゃねえのかコイツ……」
「牧場主の可能性もありますねえ。さて、では我々も食べてみましょう。(略)」
それぞれ『ドラゴンクエスト』、『風来のシレン』、『牧場物語』シリーズから。
『薬草』などの草系のアイテムがあり、それを食べることができるゲーム。
「青臭え!! もう口ン中に草原まみれやで!!」
岡山の建設作業員が掲示板に書き込んだ以下略
殺意の波動に目覚めつつあるユージンをスルーして、シコルスキは再び指を鳴らす。
『ストリートファイター』シリーズに登場するリュウの隠しキャラ、『殺意の波動に目覚めたリュウ』から。
●おわりに
文庫の方よりも体力を使った。
あくまで私の分かる範囲でだが、パロネタのレイヤーが広くなって、ひととおり全部やっつけたと思ったらまだ隠れていたりする。ゴキ○リかな?
ところで短編としては、『看病と弟子』が一番面白く読めた。看病ネタとメシマズネタは鉄板のはずなのに、この作品の場合は『何を見せられたのだろう』という疑問のほうが先行する。脳味噌の普段使わない場所を刺激する『シコルスキ・ジーライフ』。脳トレにおすすめです。
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