「ちはやふる」に見るリーダーの資質
BOOKWALKERのセールで、「ちはやふる」を30巻まで一気読みした。
少女漫画を読むのは「夏目友人帳」ぶりくらいだが、内容的にはかなりスポ根的で、少年漫画を読んでいるような気分になった。
そもそも少女漫画なのに表紙にオッサンのドアップが許されるという時点で、かなり特殊な作品だと思う。

- 作者: 末次由紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/12/27
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で、登場キャラクターもアクが強く、主人公の周囲のメインキャラを見ても、デブキャラや冴えない系メガネがしっかり存在感をアピールしている。
そして、それらのキャラがしっかり格好良く描かれているのが、とても小気味良い。
主人公の千早こそ、美人でかるたの才能があり、まっすぐな性格で、二人のイケメンに惚れられる『持てる者』だが、それ以外の、あまりパッとしない『持たざる者』に焦点を当てるのが、とても上手いと思った。
ヒョロくんというキャラがいる。
千早たちメインキャラの3人とは、小学生の頃以来のかるた仲間だ。
高校では、競技かるた強豪の北央学園に入り、千早たちとは全国1位を争うライバル同士となった。
ただ、千早たちと比べて実力に乏しいのか、運がないのか、かるたのランクはB級どまりで、なかなか上へは這い上がれずにいる。
そんなヒョロくんが3年になった最後の大会。頼りになった強い先輩は卒業し、新しい戦力として、ヒョロくんは1年生を集めてきた。
しかも、入学式が終わって新入生が入ってきてから――などという悠長な話ではない。北央学園は中高一貫なため、後輩が中学生だった時から、ヒョロくんは声をかけていた。ただし、かるた部のことなど関係なく、ただ単純に、学校の先輩として。
おそらくエピソードとして描かれていない部分でも、ヒョロくんは何人もの後輩と絡んでいたのだろう。かるた部への勧誘などは関係なく、ヒョロくんが『そういう』人間だからだ。
そうして入部してきた1年生は、ヒョロくんの指導もあって、3人がA級となった。
万年B級のヒョロくんが悔しくないわけがない。
しかし、そんなヒョロくんは、昇格した1年生を牛丼屋に連れていく。
ヒョロくんは、自分の才能のなさに自覚的だ。
だから、大会ではA級の1年に勝たせるように仕向け、自分は敵チームの最も強い相手に当たろうとする。
チームの勝利を第一に考え、チームのポテンシャルを最大限に引き出そうとする。
ヒョロくんは、リーダーとしてかなり理想的だ。
常日頃から後輩とコミュニケーションを取り、面倒を見つつ、下手に調子づこうとしたらちゃんと諌める。
ヒョロットカードとかいう、オカルトなのか情報分析の結果なのかよくわからないが、謎の技術で対戦相手の予想はピタリと当てる。
だから、試合に負けていても、決して後輩に侮られない。
それでなくても、人徳があるから自然と人に慕われていく。
そして、自分に才能がないから、後輩たちの工夫や努力をしっかりと把握できる。
リーダーは、スターである必要はない。
チームをまとめ上げ、一つの方向に導くことができればいいのだ。
『才能のある』千早は、その『チーム』について苦悩し、ヒョロくんの『強さ』に気づく。
チームを組むということは、個人とはまったく違うことができる代わりに、それを維持することそのものに、とてつもない労力を伴うのだ。
そのための努力を厭わず、『才能がない』故に、チームメイト個人の技量を問わず、どんな人間でも引っ張りあげられるヒョロくんは、とてもリーダー向きの性向をしていると思う。
きっと、社会に出ても、優秀な管理職になれるだろう。
「ちはやふる」は、高校生の競技かるたを題材にしているだけあって、多数のチームとそのリーダー(顧問含む)が登場する。
その中でも、ヒョロくんはとてもいいリーダーをやっているし、これからも応援していきたい。

- 作者: 稲垣理一郎,村田雄介
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読んでいて思い出した作品。
こちらも、『才能』の扱いが丁寧だった覚えがある。