2017年のTVアニメを振り返る
年の瀬なので、今年のアニメで印象深かったものを時系列順に。続編物は除いている。
ランキングとかにはしない。
微ネタバレあり。
何はなくとも外せない一作。このアニメの要素として、
・表面上は平穏ながら、奥に不穏さをたたえている世界観。
・起承転結を押さえ、布石や伏線を織り込んだストーリー。
・次回に対する引きが強い。
・使いやすいミームとしてのけもフレ語録。
・その上で、かばんちゃんのまっとうな成長物語をやっている。
といったものがある。
特に世界観考察と語録は人気の牽引役として大きく、1月末~2月頭ごろのけものフレンズ考察班の盛り上がりと、そこかしこから聞こえてくるすっごーいたーのしーという語録の数々は記憶に新しい。この二つは、けもフレ人気における車軸の両輪といってもいいだろう。
その上で、物語としての面白さ、優しい女の子たちが助け合って課題を乗り越えるという美しさがエンジンとなって2017年の始まりを駆け抜けたのである。
チープといってもいいCGによる画面の不利も、むしろ温かみのある無二の表現という形で、プラスに働いてしまった。ここまでの反転は稀有な例だと思う。
続編のヤオヨロズ降板は残念の一言だが、ファンとしてほどほどに期待して待っている。本作の完成度が変わるわけではないのだ。
カンナのかわいさで視聴し続けた感のあるアニメ。ただし最萌は小林さんかもしれない。
コメディの中に時折シリアスなシーンが増えるが、それほど違和感はなく、上手にまとめていた印象。むしろギャグの方が、自分の尻尾を食べさせようとしたり、ちょっと生臭かったかもしれない。
なにげに男キャラがよく、滝谷くんとファフニールの友情が育まれていくのは微笑ましかった。
しかしさすがにエルマが登場するのは遅すぎないだろうか。
まったく話題にしている人を見かけないのだが、本当に放送されていたのだろうか。私だけが見た白昼夢なのではないだろうか。
どちらかというと駄作寄りなのだが、心に残るアニメではあったので記載しておく。
だいたい本作を見ていて気になった点は以下のような感じ。
・『ハンドシェイカー』に選ばれたコンビが手を繋ぐと、『ジグラート』という異空間が発生し、その中で『ニムロデ』と呼ばれる武器を使って戦う。序盤は専門用語が多く、説明が少ないため入り込みづらい。
・ジグラートでの戦いに敗れると、敵は能力を失うだけだが主人公側はヒロインが死ぬ。
・敵は普通に離れて動けるが、主人公側はずっと手を繋いでいないとヒロインが死ぬ。
・敵は全力で倒しに来るが、主人公は上記のことを説明しない。
話が進んでいくにつれて問題点は説明されたり緩和されたりするが、今度は逆に『そもそも設定死んでね?』と思うこともちらほら。
途中から主人公組がしばらく手を放していてもOKになったのは、ちょっとコンセプトをスポイルしていた気がする。画面とストーリーの自由度を上げるためには仕方なかったとは思うが。
いい点を挙げると、バリバリCGエフェクトアニメであり、GoHandsらしい美麗な作画が特徴。ニムロデのトリッキーな動きによる戦闘も悪くない。
ただ、それが逆に目の痛くなるような見づらさを生んでいる側面もある。難しいところだ。
●AKIBA'S TRIP THE ANIMATION
各所にネタを詰め込んだイロモノギャグアニメと見せかけて、6話のパソコン回はちょっと感動してしまった。
イロモノさに隠れがちだが、まとめちゃんがちゃんと王道ヒロインやっていて良き。
サターニャが可愛い。それだけで完走する価値があった。
ガヴリールもいいが、最終話で姉がやってきた時が一番可愛かった。
雰囲気は90年代の夕方アニメ。OPは土曜の朝っぽい。
排斥される獣人、ボロをまとった謎の少女、奪われた魔法書、懐かしさを覚える呪文詠唱と、刺さる人にはザクザク刺さる要素が盛られている。
原作が電撃大賞受賞作だけあって、ストーリーもしっかりしており、最後まで見せる力がある。そして花守ゆみりのヒロインがとてもかわいい。というかそれ以上に獣人どもがとてもイカしている。
関係ないが、ラジオがとても好きだった。
伏見つかさの妹アニメ第2弾。主人公と引きこもりの妹が、それぞれラノベ作家とイラストレーターやってます系の話。
紗霧専用作画担当がいるというのはさすがに笑ったが、それだけに極まったこだわりを感じる。EDのアニメーションも好き。
それぞれのヒロインのキャラ立ちはさすがだし、1クールで兄妹の成長をきっちり描いてくれたのは好印象。
お気に入りキャラは一周回って紗霧ちゃん。
●終末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?
個人的今年のトップクラス。
主人公のヴィレムはもと勇者の一員で、敵の中ボスと相打ちになって石化していたが、発見された時にはすでに人間は滅亡しており、地上は『獣』と呼ばれる怪物に蹂躙されていた。
ヴィレムが生きていた時代から500年が経っていたその世界では、人間以外の種族が空の上の島に細々と暮らしており、その中には人間そっくりの少女たちが暮らす場所があった。
こんな導入の本作は、寂寞とした崩壊後の世界と、その上に残る箱庭のような生存圏というかなり好みな雰囲気を持って始まった。
平穏で賑やかな街の描写、兵器庫での少女たちとの楽しげな日常、その隙間から除く世界の薄闇と、否応なく迫る戦い。
すべて高度なバランスでまとまっていて、感動しきりである。BGMの演出も素晴らしい。
一部説明不足で分かりづらい点もあるが、クトリという一人の少女の物語として、とてもよくできていると思った。
結末がボロクソに言われてしまっているが、私はラストまで含めて割と好きである。
ファーストコンタクトものとして、中盤までは基本文句はない。カドを転がして移動するだけで1話使ったり、それがとても面白かったし、しっかりした構成でワンダーを提供してくれている。
ひどいと言われるラストのあの展開は、SFをやめてしまったという声もあるが、別にデウスエクスマキナはそれほど問題ではない。というより、SFとしては誠実な方である。
問題なのは、1クールの間視聴者に誠実さを見せてくれていた真道があれをやったということで、さすがに自分の子供をああいうふうに利用するのはどうなのと思うところだ。
いくら世界全体の危機とはいえ、あの真道がネゴシエーションを捨ててそれをやるか? という違和感があり、いったい何を根拠に確信してその作戦を行ったのかという疑念があり、さすがに花森くんかわいそすぎだろという同情がある。
そしてザシュニナも宇宙の影響で変化してきていたとはいえ、まるで夫を愛人に寝取られた中年妻みたいな扱いになっているのはどうかと思う。
この顔である
『正解するカド』はSFを裏切ってなどいないが、キャラクターを裏切っている。
この展開をやるなら、素直に映画にしといてほしかった。
これだけ複雑な話を2クールにまとめ切ったのは脱帽。地味ながら、繊細な作りが素敵。
最初の方で強敵だった革命家さんが、いつの間にか便利アイテムみたいな扱いになっているのは笑った。
しかし、最終エピソードでそれまでの仲間みんなの能力を使い、敵側の重要人物を説得したのはなかなか感動する。
視聴時に冷静になってしまうと、よしこが割と笑えないレベルのアホであることに気づいてしまうので、15分枠にしたのは正解。
脳を溶かしながらジャンクに摂取しよう。
夏の怪物。以前に個別記事も書いた。
クソだクソだと言われている11話だが、9話のオエド大戦の時の方がひどかったと思う。
異世界スマホの売りはキャラクターではなくシチュエーションである。無用なディティールを排し、すべての問題をスマホ太郎の無双につなげるという、一種の清々しさすら感じる様式美こそが本作の肝だ。
そのせいで、ヒロイン勢がスマホ太郎を持ち上げるだけのロボットじみた存在になってしまっているが、それが好きな人にはむしろキャラクターの余計な肉付けは不要なのかもしれない。
余談だが、アニメ公式サイトのデザインがなんとなく不愉快である。
今年の一押し。女の子、スチームパンク、スパイ、メカ、銃と、オタクの好きなもの詰め込みましたみたいな内容がちゃんとまとまっているのはすごい。
話数と時系列はある程度シャッフルされているが、基本的には1話完結形式なのでとっつきやすい。特に第1話でチーム全員顔見せし、本作の方向性をしっかり提示できたのは大きく、シャッフルが有効に働いたといえる。
ダイナミックなバランスで成り立っていた本作だが、着地の絶妙さは見事だった。話の続きが気になるところではあるが、これ以上何を追加してもグダりそうなのが難しいところ。
好きなエピソードは第6話。好きなシーンはロイヤル土俵入り。
3度目のアニメ化にして原作ラストまで詰め込んだ一作。
尺の関係でエピソードのカットや急ぎ足なところはあったが、さすがにキャラの強烈さとギャグの切れ味は健在である。
特に23話のオリジナル展開で、レイドとニケの対決を用意してくれたのは素晴らしい。愛のある原作補完だった。
また、声優の名演が光るアニメでもある。中でもニケ、ククリ、ジュジュ、カヤがもはや形態模写のレベルで、巡り会わせを感じた。
傑作。丁寧な作画と演出もさることながら、全編を貫く冒険に対する希求が熱い。
可愛い絵ながら後半からのエグさが特徴的な本作は、好奇心や『憧れ』という感情への優しい視点も持っている。
タマウガチとの遭遇エピソードでは、原作から動きと声が付くことで、悲痛さが10倍になっていたが、その後の回復シーンの前向きさは3倍くらいにはなっていた。
回復はしたが左手に障害を負ったリコが、残された手の機能を確認して笑みを浮かべるシーンは象徴的である。
「憧れは止まらない」というのは、本作に通底するメインテーマなのだろう。
それに勇気づけられる気がするから、とても惹かれてしまう作品なのだ。
なお、リコ役の富田美憂は現役高校生らしい。とんでもねぇな。
ライトオタク向けのネタが散りばめられた部活もの。
と見せかけて、11話からとんでもない方向へと舵を切る問題作となった。いったいどんな力学が働いてこの判断になったのかは不明だが、青春部活ものかつメタフィクションものでもあるという、ある意味受けのいい組み合わせを実現している。
しかしやはり、展開が急すぎるというのはあるし、『それやってみたかっただけだろ』感は拭えない。好きではあるけども。
学園祭でひとつの区切りは付いていたし、もう少し構成を気遣えば印象は変わっていただろう。視聴者を楽しませようという精神は感じるが、驚きよりも雑さが前面に出てしまったのが残念。
また、最終的には10話までの出来事がリセットされてしまい、それまでのメンバーの頑張りがなかったことになってしまったのは悲しいところだ。
2017秋アニメにおける、夜明けの炎刃王枠である。
ただ、現代のアニメで、ことぶきつかさやあらいずみるいみたいな作画を拝めたのは何だか嬉しかった。
こんなんさすがに笑うわ
何気なく見ていたら引き込まれたダークホース。ヒーローたちの戦闘が格好良く、ラスボスも芯が通っていて悪役として好感が持てる。
それに主人公兼ヒロインともいえる笑の成長が著しく、見ていて気持ちの良かった作品である。
●キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series
2度目のアニメ化。1話完結で入りやすいのは前作からだが、エピソードの選択もなかなかいい感じで、安心して見られる枠である。
ラルケらしくキャラの仕草や表情がかわいいのに加え、背景美術もとてもベネ。
特に好きなのは、嘘つき達の国、雲の中で、電波の国あたり。フォトのオリジナル笑顔は必見である。
お気に入りシーン
今年の最終クールに現れた魔物。
どこがどう悪いというより、すべての要素がおかしく、なんと表現すればいいのか分からないもどかしさが狂おしい。
作画が壊滅しているのはともかく、ストーリーと音響も死んでいるのはどういう理由からなのか。予算、納期、人員、もしくはその他の人知の及ばぬ領域の問題なのか。現代社会を映す鏡としての社会派な側面も持ち合わせている作品である。
今年の最終クールに顕現した魔王。
出来のひどさはダイナミックコードと争うが、見ていて不快であるという点においてはるかにこちらが上である。
子供しか存在していないかのような世界、死に方のバリエーション見本市を目指しているとしか思えない安易なグロと、死んでも特に感慨の湧かないキャラの薄さ、同じことしか言っていない主人公の無能さ、実はウイルスの仕業だったという事実の意味のなさ、すべてが低いレベルでまとまっており、なぜこれをアニメ化したのか理解に苦しむ。
そして単純に構成も悪く、恐ろしく頻繁に主人公の回想が挟まれる。素直に過去の話の方をアニメ化するのでは駄目だったのだろうか。これでは前回の生き残りで経験のあるはずの主人公の無能さが強調されるばかりである。
宮野真守の演技だけはすごい。ただ、そのせいで内容のひどさが際立っているともいえる。
●宝石の国
フルCGの画面が作品と抜群にマッチした一作。宝石たちの煌めく髪が特に美しい。
キャラクターはどの子もいいが、やはりフォスが一番好き。イメチェン前も後も魅力がある。
欠損フェチにも一定の需要は見込めそうなアニメ。
●この花綺譚
「ありがとう」…それしか言う言葉が見つからない…。
百合ありホラーありハートウォーミングありで、毎日の生活に潤いを与えてくれた作品。
当初は普通の量産型萌えアニメかと思っていたが、丁寧なキャラクターの掘り下げとストーリーに引き込まれていった。
お気に入りキャラは柚と櫻。
天使か
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●まとめ
終わってみれば、そうとう豊作に感じる年となった。特にCG表現の躍進が凄まじく、ひとつの節目として語られる年になるのではないだろうか。
Infini-T Forceのようなダイナミックなアクション、宝石の国のような繊細かつ大胆なアートワーク、けもフレのような瓢箪から駒的な求心力など、今後の進歩も気になるところだ。
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