傷口にユーゲル

主にアニメとか漫画とか仕事のこと

個人的に好きな平成アニメを振り返る(2010~2019年)

2010年代がすでに終わろうとしていることに驚愕を禁じ得ない。



●探偵オペラ ミルキィホームズ

TVアニメ 探偵オペラ ミルキィホームズ ボーカルアルバム~ミルキィ show time(音符記号)

人生のうちでは、出会うべき人に出会うべきタイミングで出会うというが、私にとってはこのアニメがそうであった。

2010年当時であってもちょっと懐かしさを感じるデフォルメ調のキャラデザ、と思ったらそんなヒロインたちが、床に落ちたスナック菓子の欠片を吸い込む、縄を食べる、バナナで仲間を売る、やりたい放題の無法地帯がそこに広がっていた。
キャラクターの可愛さはむしろ中身のトンデモぶりを際立たせる方向に働いており、一挙手一投足にツッコミを入れずにはいられない見事なハイテンションを維持しつつ最終話まで駆け抜けてしまう。
カブトボーグより可愛らしいが理性的でなく、ギャラクシーエンジェルより仲間思いだがよく飢えている、そんな彼女たちが、私の2010年ベストヒロインだ。

飛び交う欲望と暴言、復活するご先祖様、発掘されるゲームパソコンぴゅう太、宇宙から地球への帰還、ドライバーのように伸びる乳首。
ぜひとも平成から令和に持ち込みたいアニメである。



魔法少女まどか☆マギカ

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語(通常版) [Blu-ray]

特に説明は不要と思われるエポックメイキング的な作品。
3話の急展開がよく話題に出されるが、個人的には圧倒的に10話の衝撃が大きい。
魔法少女と銘打ちながら不穏な人間関係とミステリチックな雰囲気をベースに持っていて、キュウべぇの存在やほむらのバックグラウンドなどにSF的な要素が散りばめられ、星雲賞も受賞している。いろいろな味付けを欲張りに詰め込んではいるが、やはり人間の描き方に魅力と真摯さがあるのがこの作品のいいところだ。

作中でさんざんな扱いだったさやかだが、私はかなり好きだし、後から追加される情報によってマミさんがどんどん最強に近づいていくのも笑ってしまう。杏子は言わずもがな文句なしにいい子だし、無限ループの井戸に落ち込んでしまい、コミュ障極まったほむらの存在も胸を打つ。
まどかは作中では『守られるヒロイン』的な役割をずっと演じていたが、その最終的な決意は、いいか悪いかは別として、とても印象深いものだった。



あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 Blu-ray BOX(通常版)

言いたいことはあるのだが、序盤~中盤の構成が完璧だったのでやはりタイトルを挙げなければならない。
引きこもり気味の主人公のもとに、死んでしまった幼馴染の幽霊が現れるというのは陳腐で興ざめになりかねない設定だが、演出が丁寧なのでむしろストレートな青春物語として心に入ってくる。
特に好きなのは、じんたんとあなるがポケモンっぽいゲームのモンスターを協力して集めるエピソード。昔ハマったゲームをちょっと疎遠になった友達とプレイし直すというのは、なにがしかのロマンを感じる。それをめんまが楽しそうに見ているのもいい。

ゆきあつのめんまに対する重たいアレな感情はギャグとして昇華できていると言えば言えるし、ちょっとトバしすぎかもしれない。むしろぽっぽのめんまに対する罪悪感の方を、もう少し丁寧に掘り下げてほしかったところ。

終盤から最終回にかけては演出が過剰で空回り気味には見えるが、めんま超平和バスターズに見つけてもらえたのは、間違いなくよかったと思う。少なくとも、視聴後の心持ちは悪くなかった。



輪るピングドラム

「輪るピングドラム」 Blu-ray BOX【限定版】

『大きな罪を犯した者の家族は、同じように罪を背負っているのか?』
あるいは、愛や運命についての物語。

1話から病弱な妹が死んで謎の帽子により生き返り、生存戦略を叫んで兄の心臓からリンゴを取り出す。突拍子もない演出はイクニ監督のお家芸とも言えるが、何もわからないまま映像を見ているだけでも脳内からいい感じの物質が分泌されている気がする。

しかしちゃんと視聴を続けていれば、ストーリーの大筋は追っていけるし、キャラクターの機微が非常に細かく表現されているので、物語として楽しむことは十分可能だ。序盤のコミカルな雰囲気から、あれよあれよという間にシリアスの海へ放り出される。初期のエピソードではあまりにアレだった苹果ちゃんが、ここまで文句のつけようのないヒロインになろうとは誰が予想できようか。

3匹のペンギンはマスコットとしてよく働いていて、ストーリーが重くなっても画面に明るさをもたらしてくれていた。



じょしらく

じょしらく 5(期間限定版) [DVD]

よくアニメ化できたなオブ2010年代。
久米田康治らしいキレたギャグを、ヤス絵の可愛い女の子が展開するというわかりやすい勝利の方程式である。

2012年放送とあって、今見ると懐かしさを覚えるネタが多い。民主党ネタ、北の将軍様、海○蔵と灰皿テキーラ、一周回ってタイムリーな築地移設などなど。

Bパートでは、原作にない各キャラの私服姿が見られ、東京観光してくれる。オリジナル要素だがよくできており、特に苦来の私服と髪型のセンスが好き。



新世界より

新世界より コンプリート DVD-BOX (全25話, 600分) しんせかいより 貴志祐介 アニメ [DVD] [Import] [PAL, 再生環境をご確認ください]

2クールかけて原作すべてをまとめ上げてくれた構成に感謝。
作画が怪しい箇所や演出にわかりにくさがあったりもしたが、すべて許せるほどに最終回が完璧すぎた。
中盤までの少女編により伏線が見事に張られたこともあって、大人編は毎回がクライマックスとでも言うべき仕上がりになっている。かつて分断された能力者と無能力者、バケネズミの醜怪さ、攻撃力のみが高まったために必要とされた、人を殺せば自分も死ぬという身体機構。それらすべてが繋がり収束していくさまは感動を覚える。

『世界の人類が全員超能力を持ったらどうなるか』というテーマを見事に描ききった力作。
ところで、原作の方の『新世界ゼロ年』はどうなったのだろうか。気になっている。



ゆゆ式

ゆゆ式 6 (初回限定版) [Blu-ray]


この世には2種類の人間がいる。
ゆゆ式を見たことのある者と、まだ見ていない者だ。

ゆゆ式に起承転結という概念はない。いや、正確にはあるようなやっぱりないような、とにかく、『友達同士のとりとめのないやり取り』というのがゆゆ式ゆゆ式たらしめている。
その『友達同士』というのもなかなか味わい深く、メインの3人のうち、縁と唯は小学生からの幼馴染で、ゆずこだけはその後から仲良くなった関係である。だからかなのか、唯はゆずこに対して当たりが強いが、縁に対してはそうでもない。そしてそれを感じてちょっと微妙な気持ちになるゆずこ。
しかしそこらへんの関係が、回を追うごとに次第に混ざり合っていくのに尊みを感じる。


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ユリ熊嵐

TVアニメ「 ユリ熊嵐 」 オリジナルサウンドトラック


『人と違うということ、立ち向かうこと、愛を与えること』

少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』の幾原邦彦監督作品。前者での決闘シーンや後者での生存戦略シーンに当たる、ユリ裁判が相変わらずトバしている。
百合とか熊とかの飾り付けに目が行くが、テーマはやはり『愛』。ただ、『輪るピングドラム』で描かれたよりもシンプルでストレートなメッセージがこの作品には貫かれている。というか実際、最後まで見るととてもわかりやすいと感じてしまうくらいに真っ直ぐにテーマを示してくれている。


前2作もそうだったが、最終話の完成度が高すぎる。悲劇的とも取れる結末の中に、爽やかな風のような希望を感じさせてくれるのが素晴らしい作品だった。



蒼穹のファフナーEXODUS

蒼穹のファフナー EXODUS 8 [Blu-ray]


ファフナーシリーズにおいて、とうとう島の外にスポットを当て続けたというのは非常に大きな意味がある。
世界情勢的に、竜宮島の人々は島を守るということに尽力しなければならなかったし、あまりにもフェストゥムが強すぎたのでそれだけでも精一杯だった。
だが、TVシリーズ1期でも描かれたように、竜宮島は蒼穹作戦に参加を打診されるくらいには世界からその力を期待されており、実際にそれを受け入れた。EXODUSでもその精神に変わりはなく、ファフナー部隊は島の外へ遠征することになる。

その結果は悲惨なものだったかもしれないが、『外へ行きたい』という若者の思い、島外の人々との交流、かつて島に弓を引いた者との対話、それぞれがファフナーという物語には必要なものであったと思う。



フリップフラッパーズ

フリップフラッパーズ 6 [Blu-ray]


楽しいアニメなので見てほしい。
ジャンル分けは難しいのだが、百合SF冒険活劇アニメだろうか。
ちょっと独特なキャラデザの女の子が、わけのわからない世界を順繰りに冒険していく、アクションとミステリが融和したような物語である。

異様なまでに動きが細かいアクションがあったり、ホラーチックな演出があったり、やけにマイナーなパロディが挟まれたり、見ている方もカロリーを消費するようなエネルギーがある。しかし後から見返すと伏線に感心するような丁寧さも持ち合わせており、なんとも贅沢なアニメだ。
余談だがEDの映像が可愛くちょっと狂気的で好き。



けものフレンズ

けものフレンズ オフィシャルガイドブック プロジェクトの軌跡


勢い余ってSSも書いてしまった思い出の作品。

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とぼけたキャラクターと時折ハッとするような台詞の応酬。作風全体を貫く『生』への肯定。やっぱり全体的にずれたような世界観。
いろいろときな臭い話もあったりはするが、やはりいい作品だ。

PPPライブのストーリーは不評だった覚えがあるが、むしろ珍しくフレンズ同士の衝突を描いている貴重なエピソードで、他とは違う面白さを生み出せていると感じる。
衝突するのは悪いことばかりではない。



終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?

『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』オリジナルサウンドトラック「青い記憶」


心を丁寧に手折りにくるアニメではあるが、根底に流れているのは『今を生きる』という前向きな意思表示だ。
『戦う女の子と無力な少年』というセカイ系の残り香を少しだけ香らせている気がしたが、主人公のヴィレムはもともと世界で3番目に強い準勇者にまで登り詰めた人物であるというのが特殊である。とっくに世界は救いそこねていて、自分の役目を終えてしまっているヴィレムと、兵器として戦う妖精の女の子。
ポストアポカリプスファンタジーとでも言うか、ゆっくりと寿命を迎えていくようなふんわりとした終末を舞台にした、これは真っ直ぐな恋愛物語である。

余談だが、上述の『けものフレンズ』とか、『少女終末旅行』とか、『柔らかな滅び』を感じさせる作品が、この時期は印象深い。



宇宙よりも遠い場所

TVアニメ「 宇宙よりも遠い場所 」 オリジナルサウンドトラック


なんの変哲もない女子高生4人が、南極調査隊に参加して南極まで行ってしまうという、言ってしまえばそれだけの話。しかし、そのディティールとキャラクターの魅力によって、作品の完成度が非凡なものになっている。

特にストーリーの構成力がすさまじく、すべてのエピソードがほとんど1話完結的にまとまっているにも関わらず、しっかりと起承転結を打ち出し、問題発生→解決というメソッドが毎回キャラクターの深堀りや成長につながっている。

おかげで好きなエピソードも選びやすいが、個人的には6話のシンガポールでの話が好きだ。日向の自分の失敗を理由に仲間の脚を引っ張るのは嫌だという気持ちも、それを否定する報瀬のリーダーぶりも、胸を打つ。



●少女☆歌劇レヴュースタァライト

「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」劇中歌アルバムVol.1「ラ レヴュー ド マチネ」

ミュージカルの舞台と同時展開するメディアミックス作品として生まれたアニメ。
監督を『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』に関わった古川知宏氏が務めており、いかにもな『らしい』演出を多分に見せてくれる。

7話でのネタばらしは一部界隈で話題になったが、私はそれよりもやはり、9話で描かれるななと純那の関係性に心を惹かれるものがある。


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ただ、一番推しているのはかれひかだが。




●まとめ

15年前にファフナーを見ていた時は、ロボットアニメもこれ以上そんなに進化しないだろうと思っていたし、13年前にハルヒを見た時は、これ以上進化させようとしたら毎週の放送などできないだろうと思っていた。

しかし技術は進歩して、毎クール大量のアニメが生産されている。現場の苦労も容易には想像つかないが、楽しくアニメ視聴が続けられているのは、ありがたいことだ。