「ぼのぼの」10円セールに感じるKindleと電子書籍業界の今後について
電子書籍版の「ぼのぼの」が、アニメ放映記念なのか、1〜40巻それぞれ1冊10円セールを各ストアで行っている。
対象ストアは、ebookjapan、BOOK☆WALKER、booklive!、hontoなど。Koboは何故か1冊50円である。
で、これにKindleが追撃してきたのだが、なんというか、ある意味電子書籍業界の欄熟性を感じる状況なのでまとめておきたい。
先に書いておくと、私はBOOK☆WALKERで既刊すべてを購入した。その時はコイン50倍キャンペーンも同時に行われていたので、実質的に1冊5円で購入したことになる。
40冊で200円。最新刊の41巻は定価(600円くらい)とはいえ、ついでに買っても合計が4桁に届かない買い物である。
価格破壊もいいところだが、とりあえずそのことは置いておく。
今回のセールは値段、期間ともに各ストア横並び(4/13まで)で、恐らく出版社主導のセールなのだと考えられる。
「ぼのぼの」の誕生は1986年。これまでに合計900万部を売り上げており、すでに十分な利益を生み出している。
そういうわけで、今回の投げ売りで、少しでも最新刊を認知してもらおうという竹書房の考えがあるのではないか。
そして、ebookjapanやBOOKWALKERがセールに入ってしばらくすると、いつものようにKindleが追撃を開始した。
Kindleは、他ストアが少しでも目立つと死ぬ病気にかかっているので、こういう場合にしばしば執拗な追撃セールを行う。
今回も、恐らく身銭を切ってセールを仕掛けに来ているのだと思う。
それでも、さすがに即座に追撃しきるのは難しかったようで、最初は1巻、2巻までなどとして、徐々にセール対象を拡大していくという流れになった。
今ではだいぶ範囲が広がり、4月10日現在で、40巻中37巻まで10円セールとなった。
23、27、36巻のみセール対象外である。
つまり、Kindleで1〜40巻を買うとだいたい2000円ちょっとかかるが、他ストアなら400円程度で済むという状況である。
さらに言うと、大抵のストアでは、新規登録者にクーポン券などを配布しているので、初めて使う人にはもう少し得がある。
これだけ見るとどう考えてもebookjapanなどで買うほうが得だが、実際の売れ行き的にはどうなのだろう。
詳細な売上データはストアが公開しないので、予想になってしまうが、この状況でも、Kindleの売上はかなり高いと考えられる。
根拠は、単純にセールの周知状況だ。
現在、「ぼのぼの」「セール」でグーグル検索してみると、トップに来る記事のほとんどが、Kindleセールについてのものである。
そしてその記事で、そもそものセール発端であるストアについては言及されない。
Kindleでぼのぼのが安売りしてるからおすすめですよ、という感じの記事がほとんどである。
上記の通り、ebookjapanなどで買ったほうが明らかに安いのだが、電子書籍のライトユーザーなら、そこまで調べずにKindleで買ってしまうという人は多いと思う。
実際、各所ブログの記事を読んでも、Kindleでセール対象の巻だけ買って読んだ、という人がそこそこ存在する。
つまり、Kindleでセールが行われていることを知ったが、他ストアで買ったほうが安いということに気づかなかったか、気づいてもKindleで一本化しているので他ストアでの購入を見送った、というところだろう。
電子書籍元年という言葉も毎年のように使われて久しいが、今現在、Kindleの存在はとてつもなく大きい。
はっきり言って、国内ストアがKindleに対抗するにしても、半分とは言わないが、3分の1くらい手遅れな感がある。
この圧倒的な認知度、浸透度の大きさがその理由だ。
Amazonという擬似インフラとも呼ぶべき存在が運営している時点で仕方のないことだが、ライト層の取り込みが上手だ。
今回のセール、現在は3冊だけ対象外だが、他ストアのセールが終わる13日までに全巻対象になることはないだろう。
すでに今回定価で買っている人がいたらその人が可哀想だし、他ストアの宣伝をKindleで上書きするという目的はすでに達成されているからだ。
上記の通り、ぼのぼののセールがあるということを知る人は、結構な確率で最初にKindleのセール記事にぶつかる。
すでにKindleユーザーで、別ストアに登録するのに抵抗のある人、もしくはそもそも他ストアの存在を知らない人は、そのままKindleで買ってしまうだろう。
また、3冊だけは定価だが、その程度気にしないという人なら2000円出してしまうかもしれない。
さらに、ちょっとセコいことに、Kindleのまとめ買い機能は、全巻カートに入れたあと、23巻だけ取り除く、といったことができない。
だから、1冊1冊クリックで買う面倒を嫌う人も、まとめ買いの値段がちょっと高いくらいは我慢して、ついでに定価の3冊も買ってしまうのではないだろうか。
言ってしまうと、Kindleの本は画質がいいわけでもないし、アプリの性能やデザインがいいわけでもない。
『Amazonがやっている』という安心感と、偏執的なまでの他ストア追撃による宣伝効果で、Webの上澄みに居続けることが、Kindleをシェアトップにしているのだ。
そもそもこのはてなブログも、商品紹介をする場合は自動的にAmazonへのリンクを貼ることになるので、知らず知らずのうちにKindleの宣伝をすることになる。
そういう土壌が築けてしまっている時点で、相当のアドバンテージなのだ。
なんにしても、国内ストアはこの状況を憂慮すべきだし、Kindleの攻勢にめげずにがんばってほしい。
余談だが、今回、国内ストア最大手のKoboがセールに追随できているようでできていないのが残念である。
普段からクーポンをばらまくタイプのストアなので、こういったキャンペーンは弱いのかもしれない。
最後に、各ストアのリンクを貼っておく。googlebooksなど、これら以外にもセールしているサイトはあるようだ。
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