KindleUnlimitedでは雑誌とビジネス書と官能小説を読もう
kindleの読み放題サービスが始まった。
Amazon.co.jp: Kindle Unlimited - 本、コミック、雑誌が読み放題。
ラインナップをざっと確認してみて、タイトルのような結論に達したのでちょっと理由を述べたい。
まず先に言っておくと、KindleUnlimited(以下KU)は、もともとあまり本を読まない人間にはさほど広まらないが、すでに電子書籍のヘビーユーザーである人間にはそこそこ支持されるだろうと思う。
こういったサービスがあまねく広まるには、コミックがどれだけサポートされているかが大事なのだが、KUでは漫画関連はそれほど強くない。
そもそも、音楽や動画と違って、本は『他に作業をしながら垂れ流す』ということができない。ある程度の集中力を持って文章を追うというのは、実はテクニックが必要な行為なのだ。
だから『手軽に開いて斜め読みできる』漫画は、電子書籍関連サービスにおいて重要な位置を占めているのだが、KUについては他サービスに比べてその点が劣る。最新刊だけは対象外なので、普通に購入する必要があるなどというのも、地味にストレスが溜まる点である。
代わりに雑誌や実用書は充実しており、さすがに12万冊読み放題を謳うだけのインパクトはある。
以下、ジャンル別に感想を述べる。
●漫画・ライトノベル
上記の通り、好みにもよるが、ラインナップはいまいち。
目につくのは、電子書籍に積極的な佐藤秀峰の作品、アニメ化もした「orange」(ただし対象は1巻だけ)、百合姫コミックス、REXコミックスといった一迅社系、押切蓮介のピコピコ少年シリーズ、「モンスター娘のいる日常」1~9巻、「ゆゆ式」1~7巻など。
集英社、講談社、小学館、秋田書店は全ジャンル通してまったく配信しないか、ごく一部の配信にとどまっているため、いわゆる4大誌系はラインナップ中に見られない。
ラノベの方は、「転生したらスライムだった件」や「本好きの下克上」など、Web小説が広く対象になっている。また、ガガガ文庫からは、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」「妹さえいればいい。」などの人気作が入っているが、どちらも1巻のみが対象なため、試し読みサービスに毛が生えたようなレベルに落ち着いている。
小学館はKUにほとんど配信していないため、これが精一杯の譲歩といったところだろう。なお、KADOKAWAは一切配信していないため、電撃文庫、角川スニーカー文庫、MF文庫J、富士見ファンタジア文庫などはまったく影も形も見えない。
●一般小説
「星のダンスを見においで」、「星を継ぐもの」、「陽気なギャングが地球を回す」、「すべてがFになる」、グリムガルの影響なのか、「隣り合わせの灰と青春」など。
「星のダンスを見においで」、「陽気なギャングが地球を回す」、「すべてがFになる」はシリーズ物の1巻であり、続刊は有料である。
「星を継ぐもの」も、地味だし読まなくても話は完結しているが、続刊がある。このあたり、出版社のしたたかさを感じる。
言ってしまうと、ラノベと同様の問題を内包しているので、現状は追加タイトルに期待である。
●ビジネス書
Kindleはもともとビジネス書に強いが、さすがにかなり厚いラインナップになっている。
そもそもビジネス書というのは斜め読みするもので、しばらく読んで合わないと感じたらさっさと次の本に移れるというのが、読み放題というサービスを最大限に活かせて相性がいい。
とにかくひとつのジャンルについて調べたい時など、複数の本の序論と結論だけ読んで、一番良さそうなものを精読するというのが気軽にできるのは面白そうである。
また、「人妻を口説く技術」などといった、普段ならお金を出して買うことが躊躇われるようなタイトルでも、試しに読んでみることができるのは馬鹿にできないメリットである。
●雑誌
ビジネス書と同じく、斜め読みでき、そもそも読み捨てることが前提の雑誌は読み放題と親和性が高い。
こちらで雑誌の配信状況をまとめてくれているが、約250誌というかなりの数字が配信されている。
すでに購読している雑誌があるなら、それだけでも元を取ることができるかもしれない。
個人的には、「ムー」、「会社四季報」、「声優アニメディア」あたりが入っているのが気になる。
「週刊ファミ通」や日経関係の雑誌が入っていればなお良かった。
●エロ
実は上記の雑誌の欄にも、「コミックバベル」、「コミックアンスリウム」、「ホットミルク」、「メガストア」などがラインナップされているし、単行本も一部配信されている。
が、以前から書いているが、Kindleでのアダルトコミックは修正が大きく、あまり信用出来ない。
過去記事
読み放題でもそれは変わらず、やはり修正はされているようだ。
なのでエロ漫画の方は諦めて、小説の方に目を向けようと思う。
ふたたび鷹野凌氏のリサーチに頼るが、Kindleの配信数に対して、フランス書院がKUに98.24%、キルタイムコミュニケーションが92.52%もの配信を行っている。Kindleで手に入るほとんどのタイトルが、KUで読めるということだ。
官能小説なら、上記のような修正とは無縁である。
さらに、ちょっと読んで合わなければ次の本に移って、好みのタイトルを探すという使い方ができる。
手軽に読め、大量のタイトルをつまみ食いできるというのは、かなりのメリットである。ほとんどが1巻完結なので、続きを普通に買わなければならないという問題もない。
余談だが、官能小説のジャンルはやけにKDP(個人出版)が多い気がする。そういう意味でも、新しい作品に出会う可能性は、他ジャンルよりも大きい。本家アメリカでは、KDPがかなりのPVを稼いでいるらしいので、日本でもそうなれば、夢のある話である。
官能小説はKUで済ませて、エロ漫画はDMMで買うという住み分けができるかもしれない。
●まとめ
漫画、ラノベ、小説はラインナップがあまり多くなく、結局続刊はお金を出して買わなければならないということになりがちなため、あまり魅力を感じない。
代わりに、雑誌やビジネス書、官能小説は種類が豊富で、続刊の心配をする必要があまりないため、読み放題に向いている。
『斜め読みをしつつ好みの本を探す』という体験が気軽にできるのは、大きなメリットである。
とりあえず読みたい雑誌があって、プラス何かを読もうという気持ちがあるなら、月額980円は安い買い物だろう。
月に1万も2万も電子書籍に使っているヘビーユーザーなら、結構な人数がサービスを受けるのではないだろうか。
私もちょっと試してみようと思っている。

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