傷口にユーゲル

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「魔法少女育成計画」10話感想

たまの存在が癒やし

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原作ネタバレなし。


・アバン

ハードゴア・アリスの中の人、鳩田亜子のエピソード。
父親が母親を殺して刑務所に収監されているため、おじさんとおばさんの家に預けられている。
学校では陰口を叩かれ、居場所がなく、父親には「もう来ないでくれ」と言われてしまう。
この『居場所がない』というのが、亜子の根っこにある虚ろな部分なのだろう。遺書まで書いてしまうほど、追い詰められていた。

また、このおばさんの家の『裕福でなさそう』感と、『物置や衣装室代わりに使っていたような部屋を急いで片付けた感』がまた素晴らしい。亜子が決して居心地のいい場所で暮らしているわけではないことが伝わってくる。

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日本人形の存在感がすごい



スノーホワイトと心を通わせるアリス

「一緒にいてくれる人が必要なの」という言葉に嬉しそうなアリス。
ずいぶん仲良くなった感じがしたが、ファヴの発表のせいでスノーホワイトのメンタルが削れてしまい、ついアリスに当たってしまう。

「何もしなくていいよね」「私ができることないし」「したいこともない」という独白めいたスノーホワイトの台詞に、「いいえ」と返すアリスが健気。
また、ずっと無表情で、感情が表に出なかったアリスが、「ついてこないで」とスノーホワイトに拒絶された時の悲しげな顔が切ない。

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・通学路での襲撃

父からの拒絶と、スノーホワイトの拒絶を重ね合わせてしまい、落ち込む亜子。そこにレインコート姿のスイムスイムが現れる。
周囲の雑踏が一時的に消え、スイムの「ハードゴア・アリス」という一言だけがぽつりと落ちる演出が素敵。

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一瞬で亜子へ斬りかかり、彼女が倒れ込んだところで音が戻ってくる。
一般人に正体が知られる=魔法少女の資格を失う=死ぬ
なので、人前で変身はできない。

魔法少女になった時の亜子の回想、「これで、白と黒で……きっと、綺麗だから」という台詞が健気すぎる。

そして、せっかく裏路地に逃げ込んだ亜子を追撃し、ご丁寧に2回も攻撃するスイムの丹念さがサイコ。



・亜子の心の声を聞く小雪

兎の足が効果を発揮し、魔法少女に変身していない小雪に声を届けた。また、スイムの攻撃は完全に即死クラスだったろうが、スノーホワイトが来るまで生きながらえていたのもこのアイテムの効果だろうか。

亜子は最期に、スノーホワイトを元気づけたかった自分の気持ちを伝えることができた。
『周りに迷惑をかけている』という意識が根底にあり、死にたがりだった亜子だからこそ、スノーホワイトに「必要」だと言われたのが嬉しかったのだろう。
自分が助けられた相手のことを助けるという、ごく自然なことをできた事実が、「死なずに済みそうです」という発言につながったのだろう。

本作は実に非業の死が多いが、亜子はスノーホワイトに自分の気持ちと兎の足を残し、自殺を選ぶという理由を失っただけ、報われているのかもしれない。

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・「スイムスイムの倒した数は4人。断トツのスコアです」

ルーラ、ウィンタープリズン、トップスピード、ハードゴア・アリスで4人。
ウィンタープリズンはピーキーエンジェルズ、アリスもミナエルの働きで倒したようなものだが、それを指揮していたということを含め、スイムスイムの実力を評価しているということだろう。



・クラムベリーを襲うスイムチーム

さりげなく双子の回想が挟まれた。
これで回想をしていないのは、たまとクラムベリーの2人のみ。さすがにここまできたら、全員分の回想は入れてくるだろう。

クラムベリーの非常識な聴覚により、最初にたまがマジカル投石でダメージを負う。
『元気が出る薬』を使っていなければ危なかったことを考えると、チームで3つのアイテムを買い占めたスイムスイムの判断はやはり素晴らしかったといえる。

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ここのシーンがなんだかエロい


しかし、ミナエルの方はあっさりと変身を見破られ、一撃で殺されてしまった。心音を探知されてしまったらさすがにどうしようもない。
ミナエルの魔法が酸素分子か何かに変身できるレベルだったら、こんなことにはならなかったのかもしれない。

残った2人で、クラムベリーを挟み撃ちにする作戦に出るスイムスイム。
そして、スイムスイムに自分と重なる部分を覚え、楽しそうなクラムベリー。



●まとめ

ハードゴア・アリスはスノーホワイトのそばで彼女を想って死に、ミナエルは断末魔を上げる暇もなく死んだ。
トップスピードは今際の際に夫のための夕飯のことを考え、カラミティ・メアリはただ自分を見下ろすなとだけ思って死んだ。

この作品は、割と悪党は無様に死ぬが、そうでない者は何かを思い残す余裕が与えられる傾向にある。
思い残す余裕とかいう時点で救済でも何でもないが、それでも視聴者からすれば大きな違いだ。まったくひどい話なのだが、彼女らが残したものが残された者に何をもたらすのか、とても気になってしまう。


次回
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