「魔法少女育成計画」9話感想
アリスの存在が癒やし
原作ネタバレなし。
・アバン
メアリによって阿鼻叫喚となった高速道路と、雫を失って涙に暮れる奈々の姿。
ウィスキーのボトルと、そばにあるのは睡眠薬か何かだろうか?
・メアリ対リップル
「遅えよ、お嬢ちゃん」のメアリが、ある意味リップルへの信頼を言外に語っている。
メアリはリップルが当然止めに来ることを予期してゲリラ行為を行っている。メアリにとって彼女は『正しい』魔法少女であり、身の危険を顧みずに自分を倒しに来るべき存在なのだ。
「その目で救ってみせなよ、この街をさ」「あたしを止めなきゃ、この街はもっとひどいことになるよ」などという台詞も、自身を悪役と定義し、その上で、『正しい』魔法少女を叩き潰そうという捻れた意志を感じる。「カラミティミラクルクルクルリン」の件を思い出しても、メアリは魔法少女というものに対する拘りは強く、だからこそ、自分と違って正義を成している魔法少女が気になるのだろう。
リップルのほぼ初めての戦闘シーンだが、叫びや呻きがとてもいい。これまで舌打ちしかしてこなかった彼女が、剥き出しの闘志を叩きつけているのが伝わってくる。
・「世界中の人間を救いたいわけじゃないし、救えるとも思ってない。でも、この街の人たちを……通りかかっただけの人だとしても、見捨てて逃げたらもう魔法少女じゃない」
とても好きなシーン。トップスピードが言うとおり、リップルが長広舌を演じたのはこれが初めてだ。
「理想の魔法少女には及ばないかもしれない。だとしても……私は、魔法少女だ」と言っている時、救助活動をしているスノーホワイトが映っているのが象徴的である。リップルにとっての『理想の魔法少女』はスノーホワイトで、ずっとまとめサイトなどで気にしていた。彼女には及ばなくても、自分なりに魔法少女として正しい行いをしようと決意した、リップルの覚悟の台詞だ。
その後の、「俺だって、魔法少女だ!」というトップスピードの台詞も合わせ、この2人が真に心を通わせた瞬間だといえるかもしれない。
・ラピッドスワロー第二形態
こんな形で原作のフォルムを再現してくれるのは嬉しい。前面のカウルとヘッドライト、背面のバーニアがかっこいい。マントの『御意見無用』という刺繍も合わせて、トップスピードの本気モードという感じが視覚的に現れている。
ただ、その後すぐにアンチマテリアルライフルで撃墜されてしまうのが残念。あんまり活躍の時間は長くなかった。
撃墜された後、次をどうするかという会話で、「やっぱり、正面から行く」と爽やかに決断するリップルがイケメン。脳筋発想なのだが、この2人の会話だと思うと、なんだか愚直さよりもひたむきさが意識される。これも正しい魔法少女の力なのだろうか。
キャラ紹介が終わったので、各キャラの名言集が入るようになった。
トップスピードの一番好きな台詞は、「俺だって、魔法少女だ」なので、できればそっちを入れてほしかったかも。リップルとかぶるけど。
・正面から行った結果
あっさり迎撃され、ほうほうの体で逃げ出す2人。
しかしそのライフル立ち姿勢だと撃ちにくくないですかね。奇襲に対抗するためにスタンディングだったのだろうが、おかげでクソエイムがまた顔を出している。
「正面からは厳しい」と言うリップルに「だから言ったじゃねえかぁー」とトップスピードがツッコんでいるが、数分前にはノリノリで賛成していたことを忘れてはいけない。
・メアリ戦決着
大量のガラス片をばら撒き、メアリがそれを撃ち落とそうとするが間に合わず、手裏剣が眉間を貫いた。
トップスピードの帽子にガラスを入れていたようで、帽子を脱いだトップスピードの姿は地味に初めて。
「ナイス相棒!」というトップスピードの言葉に、ほとんど初めて見せるリップルの微笑みが眩しい。
・スイムスイムの凶行
血の付いたルーラと、まったくなんの感慨も見せないスイムスイムが禍々しい。
激高し、雄叫びを上げながらスイムスイムを攻撃するリップル。だが、物理攻撃が通用しない相手ではどうしようもない。
そして、妊婦姿で絶命しているトップスピードを目撃し、悲しみからか、怒りからか、「なんで」と繰り返すリップル。
ここまでの目まぐるしい彼女の感情の動きが、とても心を打つ。
・ミナエルの急襲
いくらなんでもこのシーンがシュールすぎる。
ミナエルが「はあー?」と言うしかないのもよくわかる話だ。
そして迷わず人形を捨て、車のマフラーを武器に、ターミネーターのようにミナエルに向かっていくアリスがなんだかかわいい。
スノーホワイトの方は、たまの困った心の声を聞き、不意討ちを防いだ。ミナエルの心の声は聞こえていないし、たまが本心からとても困っていたから読心できた形だ。
見つかってしまったたまを罵るミナエルに、モグラたたきのような攻撃をするアリス。見た感じ本気ではなく、追い払おうとしているだけのようだ。
実際、正当防衛とはいえ、マジカロイドを惨殺してしまったことがスノーホワイトからの印象に陰を落としていることを、アリスなりに気にしているのかもしれない。
ミナエルに透明外套を取られ、矢面に立たされる形になったたまが慌てて穴を掘って逃げるのがかわいい。アリスと合わせ、今や貴重な癒やし枠である。
・シスターナナ脱落
雫にプレゼントしたマフラーで、首を吊ってしまった。
靴下に染み込む液体の描写がえげつない。
彼女の本心については各所で語られているので割愛するが、私にとっては、シスターナナはかなり好きなキャラである。ウィンタープリズンとの関係性ももちろんだが、彼女本人の考え方は印象的だし、人間的だ。
『正しいだけ』の魔法少女ではなく、一貫して『人間』を描いている本作の一端を表しているキャラクターだと思う。
・脱落者発表
「ついに予定していた8名以下になったぽん。素晴らしいぽん」「いやー、これは完全に誤算だったぽん」というファヴの言い方が惚れ惚れするほどひどい。
トップスピードの遺品となってしまった『御意見無用』のマントを前にする華乃。
スイムスイムは、冷静にあと何人消すかを計算している。
また、もはや何度目かわからなくなってきたルーラの回想で、「正々堂々とやるなんて無意味だ」というお言葉が残されていることが発覚した。
スノーホワイトへの不意討ちが失敗したことから、彼女へは『正々堂々と』攻撃しなければならなくなったと悟り、目下のターゲットからは外されてしまった。
ミナエルの思惑はバレていなかったわけだから、完全な警戒ができるわけではないと考慮してはいるだろうが、スイムスイムからすれば、不意討ちは自身の存在意義に等しい。アリスがそばにいることを考えても、スノーホワイトを積極的に狙いたくはないだろう。
だから、そこからクラムベリーを狙おうと考え出しているのは無理もない話ではある。『弱いから姿を見せない』という予想が、実際にはとんでもない思い違いだとしても。
最後に、ミナエルの「殺せる奴が1人いる。今度は失敗しない!」という台詞でエピソード終了。次週へ続く。
●まとめ
『魔法少女とは何か』という、本作の命題ともいえる問いが投げかけられた感じがする回だった。
メアリにとっては歪んだ愛憎の対象だったが、リップルやトップスピードにとっては、自分の信じるものであり、生命を賭けられるものだった。ラ・ピュセルが自分の信じる魔法少女を目指していたように。
テレビに出てくるような魔法少女なら、そんなことで悩みはしないだろうが、彼女たちは人間であるが故に、『魔法少女であること』に縋ったり、誇ったり、翻弄されたりする。
終盤に近づいてきたが、このまま一直線に『人間と魔法少女』を描いていってほしい。
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