個人的に好きな平成アニメを振り返る(2000年~2009年)
ゼロ年代はいろいろと濃い。
深夜アニメが人気を博してきて、セル画からデジタルへ移行した時代でもある。
90年代後半から続いてきた『セカイ系』の残滓は、この年代で息の根を止められた。
●R.O.D-READ OR DIE-
R.O.D-The TV-
アメリカ大統領がよく失禁するアニメ。
紙を使ってのアクションという特性上、アニメーターの労力が心配になる作りでもある。
OVAでは『現代に復活した偉人との戦い』というおいしい設定に、読子のとぼけたキャラ、スピーディでスタイリッシュなアクションが絡み合い、独特の楽しさを生み出していた。
ファーブルだから昆虫に乗ったり脱皮したりしてもいいだろという、ワンダー優先のノリは好感が持てる。
読子は読子で、紙飛行機で空を飛んだり、ドレイクのドル札を使った札束サーベルで白兵戦をしたりと、多彩な戦法が光っている。これは続編のThe TVにも違う形で受け継がれていて、読子ひとりが戦法を使い分けるのに対し、三紙妹はそれぞれが弓矢、傀儡、体術を主に使って個性を出している。
OVAは短い尺でよく話をまとめていたが、TV版の方も基本1話完結で満足度の高いストーリーを紡ぎ、高い構成力を示した。特に第1話は20分のアニメとは思えないほどの密度で、まるで映画を1本見たかのような充実感である。
摂取すると脳が溶けながら多幸物質が溢れて生きる理由が見つかるアニメ。
1~4期まで作られているが、私が一番印象に残っているのは3期である。ツイン隊が登場すると毎回ひどい目に遭っていた記憶がある。
好きなエピソードを適当に羅列すると、雪山で遭難してノーマッドを食べる、炊飯器との合コンで王様ゲームをしていると覚醒して生身で空中戦を始める、ミントが木になる、エンジェル隊全員が崖に落ちて宙吊りになり、ヴァニラがノーマッドをプロペラにして飛行する、シャワーヘッドから巨大な昆布が現れエンジェル基地を制圧する、などなど。改めて思うが、スタッフはクスリでもキメながら制作したのだろうか。
サブタイトルが凝っている勢でもあり、すべて食べ物系で統一されている。『気になるバウムクーヘン』、『サインはブイヨン』、『ラブ米』なんかが好き。
また、「この番組は、ご覧のスポンサーの~」という提供音声を、作中のキャラが読み上げてくれるなど地味なサービス精神も旺盛である。
●蒼穹のファフナー
蒼穹のファフナーRIGHT OF LEFT
蒼穹のファフナーHEAVEN AND EARTH
まさかこんなにシリーズが続くとは思っていなかった。
リアルタイムで見ていた時は、確か弟との録画枠争いに敗れ、途中までしか見られなかったので、後からTSUTAYAでDVDを借りて一気見したのだった。今考えると、それはすこぶる正しい視聴方法だった。あの流れで1週間続きを待ちながら過ごすのはキツい。
ところで脚本が冲方丁に交代してからのシナリオばかり話題になるが、私は前半のストーリーも好きである。専門用語の多さと説明の少なさは、突然非日常へ追い落とされた子供たちの感覚を追体験するという意味で、悪くない効果をもたらしている。
ただ、説明が少ないというのは本気でその通りで、一騎が島を脱走するくらいにならないとそもそもの世界情勢もわからないし、それ以上にキャラクターの心情がわからない。
ファフナー後半というのはまさしくそのキャラの中身をさらけ出していくというのが重要な側面で、作品全体を通して重要なテーマとされている、『対話』がかなり意識して挿入されるようになる。一騎との会話を避けていた総士が、自分の部屋に一騎を呼んで話をしようとするシーンは、重要なターニングポイントであり笑いどころだ。
一方で、戦闘は加速度的に悲壮さを増し、視聴者の心を掘削機にかけてくる。このあたりのスピード感とシナリオの密度は異常で、新幹線の中で書き上げた脚本とは信じられない出来である(冲方丁の『もらい泣き』で、奥さんがファフナーのシナリオを酷評したので、新幹線の中で脚本を書き上げるエピソードが出てくる)。
この構成力は続編にも受け継がれており、RIGHT OF LEFTでは1時間足らずの尺の中にどれだけの密度で要素を盛り込んだのかというレベルのシナリオが展開し、劇場版では、凄まじく進化した作画が完璧と思えるストーリーを彩っていく。
時間あたりの心の振動率が非常に高いアニメである。
私は原作既読組だったのだが、例の第1話には度肝を抜かれた。
そしてキョンの独白の再現率に舌を巻き、EDのダンスに心を奪われ、毎週のエピソードシャッフルに振り回されつつ作品をフルに楽しむことができたという点で、この時代でリアルタイムの視聴体験ができたのは幸福なことだっただろう。
原作を知っている人も知らない人も楽しめるようにという制作側の気持ちがあったらしいが、見事にやられてしまった。
もともと『憂鬱』エピソードのみで非常に完成度が高いため、短編によってシナリオを補強するのは蛇足になってしまうかもしれないという危険があったが、そんな心配をまるで意に介さないような構成の巧みさがすごい。
特に『射手座の日』や『孤島症候群』ではうまく無駄を省き、SOS団の日常として優秀な補足を行っている。『憂鬱』ではそれほど内面が見えず、『退屈』ではハルヒの陰に隠れがちな長門有希というキャラクターの布石として、短編エピソードの出来がいいのは重要である。エンドレスエイトのことはこの際忘れよう。
その悪名高いエンドレスエイトを生み出した2009年放送版は、2006年放送版のようなエピソードシャッフルは行われておらず、時系列どおりに展開される。それはそれで効果があって、『溜息』で横暴さが目立ったハルヒが、『ライブアライブ』で人助けをするという形で成長を見せているのがはっきりするのだ。
そして劇場版の『消失』によって、TV版でばら撒かれていた伏線が収束し、視聴する自分がキョンに同一化していき、素晴らしいラストに感嘆する。
これを見ることができただけでも、アニメを見ていてよかったと思えたものだった。
今見返しても作画を含めたレベルが高く、ストーリーのテンポもいい名作である。
田舎は怖い。というか女は怖い。
そんなイメージを心に植え付けられてしまったような感はある。
私のひぐらしの入り口は確か漫画で、そこから原作ゲーム、ついでアニメという順番で入っていったと思う。
原作のあのイラストと実写加工背景というのは思いのほか怖さをうまく演出していて、秀逸なBGMも合わせて続きを追うのが止まらなくなるくらいの引力があった。何に最も惹かれたかと訊かれればやはりレナをはじめとするキャラクターだろうが、あの『解けるわけねぇだろ』という謎にも一応推理をしてみるくらいには興味を奪われていた。
結局のところ、真相はまあ、アレなことだったのだが。羽入がなんの脈絡もなく登場した時には目を疑ったものだ。
しかしそれがひぐらしの魅力を毀損するかというとそんなことはなくて、キャラの熱量は十分にストーリーを引っ張っていくだけのパワーを持っていたと思う。
アニメの方は出題編から回解答編まで50話の尺を獲得しているが、その上で原作ではちょっと冗長だった日常パートを減量するなどして、中だるみしないように構成されている。何より声がついたことによって、まったく別種の面白さを引き出しているのがいい。魅音、詩音や梨花などが特に顕著。
好きなエピソードは罪滅し編。好きなシーンは詩音がケジメをつけさせられるところ。
●人造昆虫カブトボーグV×V
なぜ人は争い合うのか。なぜ人はわかり合えないのか。そんなことに思いを馳せたくなるアニメ。
カブトボーグを一言でいうなら、『純粋培養されたカオスの権化』である。論理的整合性やあらゆる倫理、この世の整理された物事すべてに石を投げつけ、ブルドーザーで轢き潰した残骸から拾い集めた混沌の欠片が、この作品を構成している。
ギャラクシーエンジェルがクスリをキメながら作られたとしても、この作品をクスリの服用程度で作れるようになるとは到底思えない。
説明のしようが思いつかないのだが、マシンであるはずのカブトボーグを海底で養殖していたり、かと思うと農園でカブトボーグが収穫されていたり、主人公3人メンバーの1人が神になったり、終盤になって4人目のメンバーが何事もなかったかのように混ざっていたり、パスタを素のまま食べたりするアニメである。
後世に残すべきアニメのひとつであることは間違いない。
好きなエピソードは、プロジェクトX回、地下ボーグバトルのフリーオプション回、いつもの4人回など。
好きな台詞は「おじいちゃんの思い出がもう残り少ない!」、「辱めてやろうよ!」。
●化物語
まさかこんなに続くとは思ってなかったシリーズ。
原作の饒舌な文章をうまい具合に料理し、時には黒齣を使って独特なテンポを生み出している。一時停止必須の画面全面文章とかは、『さよなら絶望先生』の頃に培ったテクニックだろうか。言ってしまえば『上手な手抜き』だが、それが作風と見事に一致しているからかえってスタイリッシュですらある。
本放送の時には『なでこスネイク』エピソードが完全に紙芝居となったり、最終回近くのネット配信エピソードがいくら待っても作られなかったり、制作進行はだいぶキツかったようだが、1クールの枠を超えてまで、ちゃんと原作ラスト(つばさキャット)までまとめてくれたのは素晴らしい。
全体的に愛情とサービス精神を感じられるアニメでもあり、円盤のオーディオコメンタリーが西尾維新描き下ろしの漫才になっているのも話題になった。
今になってみると、声優陣に当時の流行りを感じられる。加藤英美里などは、ちょうどこの時期にブレイクし始めていた記憶が。
真宵の「噛みました」案件で好きなのは、「良々々木さん」、「阿良々木…読子さんじゃないですか」。
阿良々木くんのツッコミも含めて楽しい。
この年代は他にもたくさんの名作があって、とても書ききれないのがつらい。
『攻殻機動隊』シリーズはもちろん、『NOIR』、『ガンスリンガーガール』、『最終兵器彼女』、『電脳コイル』など、私にとってはSFや美少女アクションの時代であった。
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