『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 痛』パロディ元ネタ考察
降りしきる雨の中、生まれたばかりの新刊が鳴いていた。
足を止めて見下ろすと、『保護してあげてください』とマジックで書かれたダンボールの中に、1冊の電撃文庫があった。
哀れみを誘うような鳴き声とは裏腹に、その全身からは漲るような闘気が立ち昇り、表紙に落ちる雨を蒸発させていた。
うっすら白くけぶるその本体に目を凝らすと、『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 痛 ~愛弟子サヨナと今回はこのくらいで勘弁しといたるわ~』という名前が見て取れた。
見覚えがある。先日保護した『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求 ~愛弟子サヨナのわくわく冒険ランド~』の面影が、その新刊にはあった。どうやら血縁らしい。
私は傍らへしゃがみ込むと、文庫を手に取った。303ページのすべてが、カミソリのように鋭く読者を威嚇している。この世のすべてに牙を剥くような、まさしく野良犬の闘魂を全身で発散していた。
表紙では泣いていても、反骨の精神はその小さな体に強力に備わっている。
慎重にページをめくった。すると、獣臭のする黒々としたナスがまろび出てきた。
私はしばらくの間自失すると、文庫を閉じ、もうしばらくの間うなだれた。
以前にも増して気合が必要だろう。そう悟った私は、ニトログリセリンを運ぶようにその文庫を自宅へと連れ帰った。
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『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』パロディ元ネタ考察(短編版) - 傷口にユーゲル
『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』パロディ元ネタ考察(短編版)
『ロストアーカイブ』グリプス戦役(ビリジアン編)
増長したカリラをわからせるために辿り着いた先は、やはりカリラだった。
一時期のシャドバを思わせるゴブリンの暴力に対抗するため、離反した獣たちは外へと踏み出す。
その一歩がカエルと爆弾に泣かされた者への光となることを望んで。
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