「オゲハ」可愛くて不穏で気持ち悪い
漫画感想。
oimo著「オゲハ」を2巻まで読んだ。
- 作者: oimo
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/10/10
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (2件) を見る
こちらで1話を読める。
表紙の子はなんだか可愛らしいが、よく見たら顔は人間の女の子でも、下半身は完全に『虫』である。
この子は宇宙人かそれに類する存在のようで、主人公と交流していくのだが、普通ならもうちょっとデザインを手加減するだろうに、この作品についてはそこらへんけっこう容赦がない。
デザインについてだけではなく、主題だけ取り出せば王道のファーストコンタクトものなのに、全体的に不穏な、奇妙な不気味さが紙面の根底にわだかまっている。
以下、ネタバレ含む。
主人公の智は受験を控えた男子中学生。ある日、空から落ちてきた謎の生命体を家に連れて帰り、自室で飼うことにする。
この冒頭のシーンだけで、智の異常性が顕著に提示される。
謎の生物が入っているサナギを裂き、人間サイズの中身を「おもしれー」と言いつつ連れ帰り、まさしく普通の虫を飼うかのように振る舞っていく。
虫につけた名前は、汚いアゲハ蝶みたいだから「オゲハ」。
智の目は徹頭徹尾笑わない。表情自体は動きはするが、顔は普通の人間のようなオゲハのほうが、よほど親しみやすい感情表現をするし、読んでいれば完全にオゲハの側に感情移入するだろう。
智はオゲハに食料を与えないし、気まぐれのようにオゲハを捨てようとしたりやっぱり連れ帰ったりする。
その印象は、まるきりサイコパスである。
小学生が思いつきで虫を飼うのと同じメンタリティだから、平気でオゲハを傷つけるような言動をするし、それが読者にとっての不快感に結びついてしまうのだ。
オゲハのほうも、まるでストックホルム症候群のように智に依存し、虐げられても健気に振る舞う。
そもそも自分を不完全な状態でサナギから引きずり出したのが智であることを、彼女はショックで忘れてしまっているのである。
だから、曲がりなりにも自分を庇護してくれている智を信頼するし、智のために泣くこともできる。
けれども、智のほうは、オゲハのそういう気持ちを汲むことはない。
そういった歪んだ関係性が、グロテスクで気持ち悪い。
可愛らしい絵で描かれるそれは、とてもめでたしめでたしでは終わらないだろう。
だからこそ、このストーリーがどこへ向かっていくのかが気になってしまうのだ。
彼女の親なのか世話係なのか不明だが、芋虫たちがオゲハのことを『種(インフェルノ)』と物騒な名で呼ぶように、オゲハ自身も人畜無害な存在というわけではないのだろう。
オゲハが智の正体を知り、智がオゲハの役割を理解した時、二人の関係がどうなってしまうのか、今から楽しみである。
アクセル・ワールド プレミアムフィギュア“黒雪姫 黒揚羽蝶”
- 出版社/メーカー: セガ
- メディア: おもちゃ&ホビー
- この商品を含むブログを見る